今回はエコノミストのエミン・ユルマズさんの著書『エブリシング・ヒストリーと地政学 マネーが生み出す文明の「破壊と創造」』を読んでみました。この本は本当に面白かったですね。私は世界史にあまり詳しくないので、歴史を復習するいい機会にもなりましたし、それをさらにこの著者は「お金の視点」で追いかけているのがとても良いなと思いました。しかもこの本では歴史上の出来事を「お金」という切り口で描いています。そこがとても斬新でした。コロンブスの話コロンブスについての記述、とても面白かったですね。コロンブスは、西回り航路という発想で資金援助を求めていたそうです。・まずポルトガルにその話を持っていった。・資金援助の要請には応じてもらえなかった。・なぜなら、西回りの航海はそれまで全部失敗。ポルトガルは拒否。・今度はスペインに行き、スペインの女王などにプレゼン。イサベル一世が興味を持つ。・でもなかなか許可は下りない。・紆余曲折を経て、最終的に1492年に資金援助の許可が下りた。なるほど、と。もしかしたらコロンブスは単なる冒険家というだけではなく、いろいろなところに営業をかけて回るスキルや、プレゼン能力のようなものを持っていて、資金調達を実現できる人物だったのかもしれないと思うと、興味深いです。ただ、この話の面白さはそれだけではありません。イベリア半島はめちゃくちゃ戦争の歴史があったそうです。・カルタゴが領有・ポエニ戦争で敗れてローマの支配に、・西ローマ帝国の衰退とともにゲルマン系民族が。・さらに8世紀にはイスラム勢力が急拡大・西ゴート王国の末裔であるキリスト教勢力が台頭・スペイン王国が誕生・1492年に最後のイスラム王朝を滅ぼし、イベリア半島にキリスト教世界を取り戻す。つまり、この半島は長い間、戦争ばかりをしてきた地域であり、長年戦ってきた軍勢が、平和の到来によって余剰兵力になった。そこで、その兵力の向かう先を外洋に求めた。そのタイミングで、コロンブスに許可が下りた、ということらしいです。軍事力が余ったからこそ、外に出ていかなければならなかった、という流れですよね。これはとても面白い話だなと思いました。単純に「許可が下りた」という話ではなく、「1492年」という年が、そういう背景を持った年だったのだ、ということが見えてきます。さらにこれを考えると、例えば豊臣秀吉が朝鮮出兵という無謀とも言えることをしなければならなかった背景も、こうした「軍事力が余ると、その行き先を外に求める」という構造ですよね。統一の後に、その力のはけ口を外に求める流れはどの世界でも必然なのか、、、異次元の金融緩和で滅ぶスペイン帝国スペイン帝国が滅びた理由についての話も、とても興味深かったです。この著者の視点から見ると、その理由は「急に大金持ちになったから」だと言っています。これは面白いですよね。普通は、大金持ちになれば、ますます栄えると思いがちですが、なぜか逆のことが起こってしまった。スペインは、当時世界中に大量の植民地を持ち、特にアメリカ大陸の大半やフィリピンまで支配するほどの繁栄をしていました。その結果、アメリカ大陸の植民地の中で、ポトシ銀山やサカテカス銀山、現在のボリビアやメキシコから、大量の銀を採掘できてしまったそうです。当時は金や銀が通貨だったため、これは商品の増加を伴わないまま貨幣供給量だけが急増する、という状況になります。要するに、スペイン国内で異次元の金融緩和が行われたのと同じ状態になってしまった、ということらしいです。なるほど、と思いますよね。これはとても面白い視点だなと思いました。その結果、スペイン国内、さらには西ヨーロッパ全体でインフレが発生し、物価が5倍程度にまで跳ね上がった、と言われているそうです。それによって、製造業や軽工業、農業といった産業が、どんどん衰退していったと。この本を読んでいると、「お金って本当に重要なんだな」と考えさせられます。お金がうまく回らなくなれば、産業も衰退していく。どれだけ領土があっても、どれだけ資源があっても、うまくはいかない。銀がたくさん掘れることが、むしろ逆効果になってしまう。アヘン戦争と銀の話アヘン戦争というと、イギリスが貿易赤字を埋めるために中国にアヘンを無理矢理売りつけた、という話として僕は理解していました。「そんな中毒性の高いものを売りつけるなんて、ひどい」という、かなり単純な受け取り方をしていました。でも、この本を読んでお金の流れという視点で見ると、また違った趣が見えてきます。当時の中国(清)で何が問題だったかというと、アヘンを売りつけられることによって銀が国外に流出していくことが、非常に大きな問題だったそうです。その結果、中国国内で銀の価値が上がり、交換レートがどんどん上昇していく。そうなると、事実上の大増税のような状態になってしまい、さまざまな問題が起きていたと言われています。だからこそ、清はアヘン禁止令を出していた、という流れになります。中国国内では、アヘンをむしろ公認して、輸入アヘンに税金をかければいいのではないか、という議論もあったそうです。アヘンを公認すれば、政府は税収を得ることができるし、国内でアヘンを栽培すれば輸入アヘンを減らすことができ、銀の国外流出も防げる。そうした主張をする人が、多数派だった。厳罰化の道を選ぼうとする方が少数派だったと。興味深いですよね。つまり、アヘン中毒者が増えたこと自体よりも、とにかく銀が流出し、経済が混乱していることの方が、より深刻な問題として認識されていた、ということですよね。ですが、結果として清は厳罰化の道を選び、その流れの先にアヘン戦争が起こった、ということになります。とにかく、お金の流れが狂い、経済が混乱することが、国家にとって非常に大きなダメージになる、という点がよく分かります。当たり前と言えば当たり前なのですが、やはりそこが一番のポイントなのだと思います。こうして見ると、これまで自分が持っていた歴史の解釈、特に今まで見てきたアヘン戦争の印象とは、かなり違った見え方になります。「こういう見方もあるのか」と、とても勉強になりました。明治維新と鉄道開通明治維新からわずか5年しか経っていない1872年に、新橋―横浜間の鉄道が正式に開業したそうです。明治維新が始まってから5年で鉄道が開通する、というのは、驚きです。その少し前までは、新撰組や坂本龍馬がいるような時代ですよね。時代劇や時代漫画で坂本龍馬が暗殺される風景を思い浮かべてみても、あの時代の5年後に鉄道が走りそうな雰囲気はまったくありません。街並みを見ても、まったく近代化されていない江戸の風景です。そんな状態から、たった5年で鉄道を作ってしまう。「日本人、めちゃくちゃ頑張ったな」と思いますし、昔の人たち、本当にすごいなと感じます。過去の偉人たちの偉業に支えられて今があるのか、と歴史を感じます。また、人類はこれほどのスピードで進化してきたかと思うと、この先数年でAIによって世界が全く変わってしまうこともまた大した進化ではないのかもしれない、、、と思ったり。活版印刷と瓦版世界三大発明といえば、活版印刷、火薬、羅針盤ですが、これらはすべて中国で発明されたにもかかわらず、中国ではあまりうまく活用されなかったそうです。理由としては、当時の中国が、国が主導してそうした技術を体系的に活用できるような統治体制が整っていなかったからだ、という話が出てきます。その結果、これらの技術はヨーロッパの方で大きく活用されていったそうです。なるほど。。技術の発明と、それを利用しての発展はまた別なのか。また、日本では江戸時代には瓦版が広く普及していて、たくさん売る人がいたそうです。今で言う新聞の号外のようなもので、即時性の高い情報を印刷して広めていく役割を果たしていました。そこで、「この瓦版って、どういう仕組みなんだろう?」と思って、これは本の内容ではなく、いろいろ自分でも調べてみました。すると、瓦版は活版印刷とはまったく違う仕組みだということが分かりました。活版印刷は、例えばアルファベットの a・b・c のような文字を一つひとつ並べて文字列を作り、それをハンコのように使って印刷する仕組みです。一方、瓦版は逆で、文字や絵を板に彫り、浮き出た部分をハンコとして使う、という方法を取っています。これを知ったとき、「なんでこんな面倒くさい仕組みを使っているんだろう? 活版印刷の方が便利じゃないか」と思って、さらにネットで調べてみました。すると、活版印刷が中国や日本であまり流行らなかった理由は、「文字数が多すぎるから」だという説明に行き着きました。ヨーロッパならアルファベット25文字ほどで済みますが、日本語は漢字にひらがな、カタカナと、とにかく文字の種類が多い。中国も漢字だらけです。これでは活版印刷は現実的ではなかったのだろうな、と納得しました。中国は自分で発明したのに漢字が多すぎて使えないとは、、、不憫な💦だからこそ、日本では瓦版のような方式が広まった、という話を知ることができて、これはなかなか面白いなと思いました。でも、瓦版は都度板を都度彫ってるわけでしょ? めちゃくちゃ手間がかかる。。。この技法で速報みたいな号外を瓦版を出して、、、ってやってたとすると、技術者めちゃくちゃすごいな、、、