こんにちは。代表のWataruです。今回は、ジョナサン・マレシック著『なぜ私たちは燃えつきてしまうのか バーンナウト文化を終わらせるためにできること(The End of Burnout)』を読んで感じたこと、学んだことを綴っていきたいと思います。この本は、私にとって非常に大きな気づきと衝撃を与えてくれました。理想の仕事でも、人は燃え尽きるまずこれが一番衝撃的でした。「燃え尽き症候群(バーンアウト)」というと、ブラック企業などで過酷な労働を強いられた末に心身が疲弊する――そんなイメージを持つ方が多いと思います。しかしこの本で描かれているのは、まったく逆のタイプのバーンアウトです。著者は、自分がなりたかった職業である大学教授になりました。まさに自分の夢を叶えた職業に就いていました。安定した収入、社会的地位、恵まれた職場環境。いわゆる“成功者”です。それにもかかわらず、講義を重ねる中で学生たちの反応に無力感を感じ、次第に教壇に立つことすら苦痛になり、ついには退職を決意します。その後、収入は大幅に減ったものの、まったく別の道でやりがいを見つけていく過程が描かれていました。興味深いのは、著者が研究者でもあったため、自分自身がなぜバーンアウトしたのかを徹底的に分析し続けたということです。そして、その研究の結果として書かれたのがこの一冊です。「仕事=自分」の時代に生きる私たち本書で語られていた大きなテーマのひとつが、「仕事がアイデンティティになっている社会構造」でした。元々は労働とは、ただ工場に行けばいい。行ってただ言われたことをやればいい。といった価値観でした。しかし、トヨタの出現で変わったとこの著者は言っています。トヨタのような仕事のやり方は、イチ労働者であっても経営者目線でチーム・会社がどう改善していくか、効率化できるか、拡大できるかを考えていきます。それにより会社はどんどん成長していきます。そのやり方はアメリカに、世界中にひろがり、今やそれがビジネスマンとして当たり前のスタンスとさえ思われてる節もあるでしょう。私自身、サラリーマンの時も1社員であろうが当然経営者と同じ目線でモノを考えるのが当然だと思っていました。結果、現代では、仕事に100%コミットすることが美徳とされ、「経営者目線で取り組むこと」が当然のように求められます。特に日本だけでなく、アメリカなど他国でも「仕事=自分」という価値観は強く、多くの人が無意識のうちにそれに縛られています。でも、よく考えてみると「アイディンティティが仕事である」「仕事をしていなければ自分でいられない」というのは本来おかしな話ですよね。人の価値は、仕事だけで決まるものではありません。家族との関係、趣味、地域とのつながり――そこにある暮らし全体が、その人の豊かさを形作るはずです。そんなこと当たり前なのに、、、!ですね。一般的なバーンアウト対策は本当に意味があるのか?本書で著者は、バーンアウト対策としてよく挙げられる「十分な睡眠」「NOと言う勇気」「優先順位をつける」「瞑想をする」といった方法を「すべて迷信だ」と断じています。私は正直、ここに最も強い衝撃を受けました。というのも、私自身はこれらを日々意識して生活していました。睡眠、運動、瞑想は効果があると思って時間を取ってやるようにし、優先付けをして断るべきことは断って仕事のバランスを取って、、、いたつもりで、一定の効果も実感していたからです。しかし著者が言うのは、これらの対策はあくまで“対症療法”に過ぎず、本当の原因は職場文化や社会的な価値観にあるということでした。バーンアウトを引き起こすのは「その人が弱いから」ではなく、むしろ「誠実で、責任感が強く、理想を持っているからこそ」なのだと。修道院のエピソード:本当に大切なものを守る働き方本書の中で、私が最も印象に残ったエピソードがあります。それは、1990年代半ばのアメリカにある修道院の話です。当時、修道士たちがウェブサイトを制作し始めたところ、これが思いがけずバズり、大量の注文が舞い込んだそうです。200人以上を雇用して大規模展開しようという話まで出ましたが、彼らはこのプロジェクトを自ら閉じました。理由は、祈りの時間が確保できなくなるから。いやー、刺激的なパワーワードですよね。通常の営利企業では考えられない判断です。(僕はこれを聞いた瞬間にハンターハンターのネテロの「かわりに、祈る時間が増えた」を思い出しました。)彼らにとって、仕事よりも祈り・学び・食事のリズムが最も大切であり、それを守れないならば成功は意味がないと判断したのです。さらに著者は、この修道院を実際に訪れ、数日間を共に過ごします。決まった時刻に鐘が鳴り、仕事・祈り・休息・集いが静かに繰り返される生活。そこで著者はある神父にこう尋ねます。「鐘が鳴っても、仕事が終わっていないと感じたらどうするのか?」神父の答えは、「仕事を忘れるだけです」。この言葉も強烈なパワーワードですよね。現代社会では「終わっていないならやり切るしかない」のが当然、と思ってしまってる人も多いかと思います。また、やり切れずに諦めて帰っても心に棘が刺さったままでモヤモヤを抱えてしまったりしますよね。でも本当に大切なものが他にあるなら、「仕事を忘れる」という選択肢も、あっていいのかもしれません。著者はこれを、バーンアウト文化から最も遠い働き方のモデルと位置づけています。私も、まさにそうだと感じました。そして私は何を思ったか正直に言えば、この本から「こうすればバーンアウトを防げる」という明確な処方箋を得ることはできませんでした。しかし、それ以上に大きな学びがありました。私が本当に考えさせられたのは、自分自身、そして家族やチームが、どうすればバーンアウトせずにいられるのか――この問いを常に持ち続けなければならないということです。仕事をしていると、さらに経営、あるいはそれに近い役割をしていると、当然利益や成長、拡大に意識が向かいます。「もっと」「早く」「より大きく」――それが正義だとさえ信じてしまいがちです。でも、本当に大切なのは、周囲の人たちが、そして自分自身が、豊かで楽しく暮らしていくことなのだと思います。仕事にすべてを捧げて、燃え尽きるような生き方ではなく、健やかに、笑って、共に働いていける環境を作ること。それを、私は経営者としてのミッションにしたい。この本は、その決意を新たにさせてくれる一冊でした。