『Brilliant Jerk(ブリリアントジャーク) 静かにチームを壊す人たち』という本を読みました。
Brilliant Jerkとは、簡単に言えば「仕事はものすごくできるけれど、周囲に悪影響を与える人」のことです。
高い成果を出す一方で、他の社員に対して高圧的だったり、乱暴なコミュニケーションを取ったり、時にはパワハラに近い行動をしたりする。
普通の問題社員であれば、成果が出ていないので問題を発見しやすい。
ところがBrilliant Jerkは、本人が成果を出しているからこそ厄介です。
「確かに言い方はきついけど、あの人は売上を作っているから」
「ちょっと問題はあるけど、仕事はできるから」
という理由で、その行動が見過ごされてしまう。 これはあるあるですよね。
優秀な人のメリットと、ヤバいやつのデメリット
本の中で特に面白かったのが、
非常に優秀な人を一人採用するメリットよりも、有害な人を一人採用してしまうことによる損失の方が大きい、
という話でした。 確かにそりゃそうだ!って思うところがあります、、、!
本人が大きな成果を出していたとしても、その人によって周囲の生産性が下がったり、優秀な人が辞めたり、チーム内で意見が出なくなったりすれば、組織全体ではマイナスになっているかもしれません。
個人の成果と、組織に与えている成果は同じではない。
これはすごく納得感がありました。
「嫌な人を辞めさせればいい」という話ではない
この本を読んでいて、もう一つ強く印象に残ったのは、
Brilliant Jerkを単純にその人個人の問題として考えない、ということです。
「問題のある人を採用しなければいい」
「そういう人がいたら辞めさせればいい」
それだけでは根本的な解決にならない。
むしろ考えるべきなのは、
なぜ、そのような振る舞いをする人が組織の中で評価され、生き残ることができたのか。
という組織構造の方です。
本の中でも「個という点ではなく、組織という構造を疑う」という考え方が書かれていました。
これは、僕がよく聴いているCOTEN RADIOで深井龍之介さんがよく語る『個人の問題ではなく構造的な問題として捉えなければならない』という話と重なります。
何か問題が起きたときに「あの人が悪かった」と個人の善悪だけで説明するのではなく、その人がそういう行動を取ることになった制度や環境、インセンティブなど、構造的な問題を考える。
歴史でも組織でも、同じなんだなと思いました。
成果主義、売上重視に行き過ぎた会社
この本を読んで、以前いた会社のことを思い出しました。
当時その会社は、とにかく売上を作らなければならない状況にあり、かなり成果主義的な組織に変わっていっていました。
その中に、実際に大きな成果を出している一方で、他の社員やパートナーエンジニアをかなり雑に扱う人がいました。
時には普通に暴言に近い言葉を使うこともありました。
でも、成果は出している。
声も大きい。
結果として、その人は評価される。
多少問題のある振る舞いをしていても、見過ごされてしまう。
周りの人もその人に追従していくようになる。
そして大量に退職者が出る。。
今振り返ると、まさにこの本でいうBrilliant Jerkが生まれやすい『構造』だったのだと思います。
僕自身も当時ミドルマネージャーでしたが、何とか雰囲気を変えたいとは思っていました。
ただ、できたことは自分のチームの雰囲気を良くしようとことくらいでした。
会社全体の評価制度を変える権限もなければ、経営そのものを変えるほどの影響力もありません。
当時も「どうしたらこの会社は変わるんだろう」と考えていましたが、具体的な答えは見つけられませんでした。
まぁ、結果悩んだ末に『この会社変えるより独立して自分の会社作る方がもしかして簡単なんじゃね?』って気づいて独立できたのは良かったです笑
本の解決策に、少しピンとこなかった
この本ではBrilliant Jerkを生み出さないために、さまざまな方法が紹介されています。
- 組織の健康診断をする。
- 評価基準を見直す。
- 権限が一人に集中しないプロセスを作る。
- 現場の違和感を拾うホットラインを作る。
- マネージャーにもコーチをつける。
- 研修などを通じて、組織のOSそのものをアップデートしていく。
どれも「確かにそうだよな」とは思います。
ただ、以前いた会社の状況を思い出すと、
「本当にこれであの状態から変えられただろうか?」
という感覚も残りました。
会社が本気で売上を必要としていて、実際にその人が大きな売上を作っている。
そんな状態で、「周囲への接し方に問題があるので評価を下げます」と本当に言えるのか。
研修を受けてもらえば変わるのか。
ホットラインを設置すれば解決するのか。
一度そういう組織になってしまったら、そこから変えるのは相当難しいのではないか。
そんなことを考えました。
研修よりも「ゲームのルール」を変える必要がある
この本についてAIと話していて、一つ腑に落ちたことがありました。
本当に変えなければならないのは、
「この会社では、何をすると得をするのか」
なのではないか、ということです。
例えば、売上120点、組織への貢献30点の人と、売上90点、組織への貢献90点の人がいたとします。
そこで毎回、売上120点の人が昇進して給料も上がるのであれば、会社がどれだけ「チームワークを大切にしましょう」と言っても意味がありません。
社員は会社のスローガンではなく、
誰が評価され、誰が昇進し、誰にお金が払われているか
を見ています。
そして、もう一段考えると、
「その人を辞めさせたら売上が大きく落ちるから辞めさせられない」
という状態自体が問題なのかもしれません。
なぜ一人の人間に、それほど顧客や売上や情報や権限が集中してしまったのか。
ここまで考えると、ようやく「個人ではなく構造を見る」という話が、自分の経験ともつながってきました。
そして今度は、自分が逆の立場になった
ここまで考えていて、一番面白かったのがこれです。
昔の僕は、
「組織を変えたいけれど、変える権限がない」
という立場でした。
でも今は自分で会社を経営しています。
小さな会社ではありますが、最終的な権限は自分にあります。
評価の仕方も、仕事の進め方も、誰と仕事をするかも、自分で決められる。
つまり、
「変える権限がない」という問題はなくなりました。
ところが今度は、まったく逆の問題が出てきます。
自分を変えてくれる人がいない。
これは結構怖いことだと思いました。
自分自身がBrilliant Jerkになる可能性
今、自分がBrilliant Jerkになっているとは思っていません。
でも、それを本当に自分自身で認識できているのか?という疑問があります。
経営者になると、だんだん自分に対して率直なフィードバックをしてくれる人が少なくなります。
まして外部のエンジニアやパートナーであれば、取引先の社長に対して、
「最近その言い方、結構きついですよ」
とはなかなか言えないでしょう。
自分では、
「品質のために必要なことを言っている」
「責任者だから厳しく指摘している」
と思っていても、相手から見たら全然違うかもしれません。
そして仕事がうまくいけばいくほど、
「このやり方で今までうまくいってきた」
という成功体験が強くなります。
これはかなり危険だと思いました。
自分が悪い方向に変化していても、自分自身ではなかなか気づけない。
メタ認知をずっと続けるというのは、想像以上に難しいことなのだと思います。
「謙虚でいよう」ではなく、フィードバックされる仕組みを作る
そこで今後、自分自身についていくつかやってみたいと思いました。
一つは、定期的に自分の仕事ぶりを他人に評価してもらうこと。
長く一緒に仕事をしているエンジニアやPMなどに、
- 「仕事をしづらくしているところはないか」
- 「直してほしいところはないか」
- 「言いづらくて言えていないことはないか」
と聞いてみる。
できれば、率直に答えられる形を作りたいと思います。
二つ目は、自分とは違う経営者や、違う業界の人と話す機会を増やすこと。
これは実際、これまでもかなり勉強になっています。
IT業界の経営者と話すだけでも刺激がありますし、お客さんと仲良くなって食事をしながら、その業界の話や経営について聞くのも非常に面白い。
本から得られる体系的な知識とはまた違う、生の情報があります。
意識的にこういう機会をもっと増やしたいと思いました。
三つ目は、体系的に学ぶ機会を作ること。
研修でも講座でもカンファレンスでもいい。
日々の仕事に必要なことだけを調べていると、どうしても自分の既存の世界観の中だけで知識が増えていきます。
時にはそこから離れて、組織、経営、マネジメントなどを体系的に学ぶ時間を作りたい。
そして四つ目は、自分の考えに対する反対意見を意図的に入れること。
これは最近AIを使うことで、かなりできるようになりました。
- 「この考え方の問題点は何か」
- 「あえて反対するとしたら?」
- 「この判断が失敗するとしたら、どんな理由が考えられる?」
とAIにぶつけてみる。
自分一人では作れない反論を強制的に作るという意味で、これはかなり便利です。
問題がなくなるのではなく、問題が変わっていく
今回この本を読んで、一番面白いと思ったのはここかもしれません。
昔は、
「会社を変えたいのに、自分には権限がない」
ことに悩んでいました。
会社を経営するようになって、その問題はなくなりました。
でも今度は、
「権限が自分に集中しているから、自分自身の間違いに気づけない」
という問題が出てきた。
昔欲しかったものを手に入れたら、それ自体が新しい問題を生みました。
たぶん、組織も人間もこんなことの繰り返しなのだと思います。
だから「自分は大丈夫だろう」と考えるのではなく、
自分が間違っていることを教えてくれる情報が、ちゃんと自分まで届く構造を作っておく。
それが今の自分にとって、この本から得た一番実践してみたいことでした。
Brilliant Jerkを生まない組織を作ること。
そして、自分自身がBrilliant Jerkになってしまったときに、それに気づける組織を作ること。
今の自分にとっては、後者の方がずっと重要なのかもしれません。
