1. はじめに:AI スクラッチ vs ノーコード
AIが進化して、コードを書くのが簡単になった今、ノーコード開発じゃなくて、AIでスクラッチ開発の方が良い?という疑問が浮かびます。
確かに、Claude AIのような高性能なAIが登場し、スクラッチ開発のハードルは大きく下がりました。プログラミング経験がない人でも、AIに指示すればかなり高度なコードが生成される時代です。
「それなら、わざわざBubbleのようなノーコードツールを使う必要はないのでは?」
そう考えるのも、無理はありません。
それでも、私たちは、少なくとも小規模案件においては「AI x スクラッチ開発より、Bubbleなどでのノーコード開発の方が良い」と考えています。(2026年2月現在の感想。あまりにもAIの進化スピードが速いので来月になるとまた意見が変わってるかも...)
なぜか?
結論を先に言えば、AIがコードを書けることと、システムを効率的に完成させることは、別の話だからです。
この記事では、実際の開発現場で見えてきた「AI×スクラッチ開発」と「Bubble開発」の本質的な違いを、具体的に解説します。
2. 誤解:「AIがコードを書く = 開発が簡単」ではない
まず、大きな誤解を解いておく必要があります。
AIがコードを書いてくれることと、システムを完成させることは、全く別の話です。
AIができること
ClaudeのようなAIは、コード生成・デバッグ・設計提案まで行える強力なツールです。
これらは本当に革命的で、私たちも日常的に活用しています。
スクラッチ開発の効率は、AI登場前と比べて確実に向上しました。
でも、AIでも変わらないこと
しかし、システム開発の本質的な工程は、変わっていません。
開発の主な工程:
技術選定
環境構築
統合作業
確認作業
デプロイ
AIは「コードを書く」作業を劇的に速くしてくれますが、これらの工程自体をスキップすることはできません。
むしろ、選択肢が増えた分、意思決定のコストが増えている面もあります。
「React と Vue、どちらを選ぶべきか?」 「Supabase と Firebase、どちらが適切か?」
AIは選択肢とそれぞれのメリット・デメリットを教えてくれますが、最終的に決めるのは人間です。
そして、その決定には責任が伴います。
3. スクラッチ開発の「見えないコスト」
スクラッチ開発には、見た目からは見えにくいコストがあります。
それは主に次の4つです。
・技術選定
・環境構築
・統合作業
・コードレビュー
これらはAIが完全には代替できない領域です。
3-1. 技術選定のコスト
スクラッチ開発では、まず技術スタックを決める必要があります。
例えば「会員管理システムを作る」とします。
その場合、例えば次のようなものの中から技術を選定する必要になります。
フロントエンド
React / Vue / Next.js / Svelte
バックエンド
Node.js / Python / Go
データベース
PostgreSQL / MySQL / MongoDB / Supabase
認証
Auth0 / Firebase Auth / Supabase Auth / 自前実装
ホスティング
Vercel / Netlify / AWS / Railway
さらに、
・状態管理
・スタイリング
・フォームライブラリ
・バリデーション
など、多くの技術選択があります。
もちろん、AIはそれぞれのメリット・デメリットを説明してくれますが、
最終判断と責任は人間が負います。
つまり、
「選択できる自由」は
同時に
「選ばなければならないコスト」でもあります。
3-2. 環境構築のコスト
技術が決まれば、次は環境構築です。
例えば、
・開発環境セットアップ
・データベース接続
・認証設定
・ホスティング設定
などを行う必要があります。
Bubbleの場合、この部分はすべて最初から用意されています。
つまり、
Bubble開発では
環境構築という工程自体が存在しません。
これは開発速度に大きく影響します。
さらに、その環境部分はBubble側が担保してくれているので、バグやセキュリティリスクがある可能性は非常に低く、安心です。
迷う必要がない。調査する必要がない。設定する必要がない。その上安全。
すぐに本質的な作業—「どんな機能を作るか」—という「業務ロジック」だけに集中できます。
3-3. 統合作業というコスト
システム開発で最も時間がかかる作業の一つが
「つなぐ作業」
です。
例えばユーザー登録機能を作る場合でも、
スクラッチ開発では次の工程が必要になります。
1 フロントエンドフォーム作成
2 APIエンドポイント作成
3 データベーステーブル作成
4 フロント→API接続
5 API→DB接続
6 認証処理
7 エラーハンドリング
8 バリデーション
9 統合テスト
AIは各ステップのコードを書いてくれます。
しかし、
・各コードの確認
・接続部分の調整
・エラー対応
は人間の作業です。
つまり、
AIは「書く」を速くするが、「つなぐ」は人間の仕事
なのです。
Bubbleの場合:
反して、Bubbleの場合は非常にシンプルです。
ユーザー登録機能なら、
1 入力フォーム配置
2 ワークフロー設定
3 遷移設定
これだけです。
理由は簡単です。
Bubbleでは
・フロントエンド
・バックエンド
・データベース
・認証
が最初から統合されているからです。
そのため、
「統合作業」そのものが存在しません。
3-4. コードレビューのコスト
スクラッチ開発では、AIが生成したコードを必ず確認する必要があります。
特に受託開発では、
・セキュリティ
・パフォーマンス
・仕様との整合性
・保守性
を人間がレビューしなければなりません。
AIが生成したコードをそのまま納品することはできないからです。
さらに問題なのは、
AIは複数のファイルを同時に変更することが多い
という点です。
例えば
・マイグレーション
・型定義
・API
・UIコンポーネント
・バリデーション
など複数箇所に変更が入ります。
開発者はそれらをすべて確認する必要があります。
Bubbleの場合はどうでしょうか。
例えば「メモ欄を追加する」なら
1 データベースにフィールド追加
2 フォームに入力欄配置
3 表示画面にテキスト配置
これだけです。
コードレビューという概念自体がほとんどありません。
3-4. 仕様変更の「波及範囲」
システム開発は常に仕様追加・変更が起こっていきます。作って終わりではありません。
これまで説明した内容と同じ理由で、仕様変更もスクラッチ開発は時間がかかります。対応するファイルが多い分、確認すべき項目が多いためです。
4. Bubbleの本質的な強み|抽象度の違い
ここまでの違いを一言で言うと
抽象度の違い
です。
わかりやすくするために、以下に図で示します。
まずはスクラッチ開発の場合です。
システムのレイヤー構造:
┌─────────────────────┐
│ 業務ロジック │ ← ここを作りたい
├─────────────────────┤
│ フロントエンド │ ← これを構築
├─────────────────────┤
│ API層 │ ← これも構築
├─────────────────────┤
│ バックエンドロジック │ ← これも構築
├─────────────────────┤
│ データベース │ ← これも設定
├─────────────────────┤
│ インフラ │ ← これも構築
└─────────────────────┘次にBubbleのようなノーコード開発の場合です。
システムのレイヤー構造:
┌─────────────────────┐
│ 業務ロジック │ ← ここだけ作る
└─────────────────────┘
↓
┌─────────────────────┐
│ Bubbleプラットフォーム│ ← 以下は全部おまかせ
│ ・フロントエンド │
│ ・API │
│ ・バックエンド │
│ ・データベース │
│ ・インフラ │
└─────────────────────┘↑上記図を見て違いがわかりますでしょうか?
スクラッチ開発は、以下のすべてのレイヤーを扱います。
・インフラ
・データベース
・バックエンド
・API
・フロントエンド
一方Bubbleは、それらをすべてプラットフォームが提供します。
開発者は業務ロジックだけに集中できます。
この違いが、開発速度を大きく左右します。
業務ロジックだけを考えればよく、低レイヤーの存在を意識する必要がありません。
「どうやってデータを保存するか」ではなく、 「どんなデータを保存するか」だけを考えればいい。
これが、開発速度を劇的に向上させる理由です。
5.「制約」がメリットになる理由
Bubbleには制約があります。
・自由にコードを書けない
・技術スタックを選べない
・高度なカスタマイズが難しい
通常はデメリットと考えられます。
しかし小規模アプリでは、
この制約がメリットになります。
理由はシンプルです。
悩む必要がないからです。
技術選定も
環境構築も
統合作業も
ほとんど存在しません。
すぐに
「どんな機能を作るか」
という本質的な部分に集中できます。
「AI x スクラッチコーディング」と「ノーコードBubble開発」の使い分け
もちろんBubbleは万能というわけではありません。AIスクラッチ開発が向いているケースもあります。
AIスクラッチ開発が向いているケース:
・独自アルゴリズム
・大規模システム
・高度なパフォーマンス要件
・複雑なインフラ構成
Bubbleが向いているケース:
・MVP開発、プロトタイプ
・小規模SaaS
・小規模業務システム
・社内ツール
多くの場合、
BubbleでMVP → 成長後にスクラッチ
という流れが合理的です。
AI時代のノーコード開発の是非:まとめ
私たちの経験上、小規模案件の9割はBubbleで実現可能です。
そういう案件であれば、AIでスクラッチ開発するよりも、Bubbleでノーコード開発する方がコストもかなり抑えられ、安全性も高くリスクが低くなると思います。
その理由は、以下です。
・プラットフォーム構築の負荷
・技術選定の負荷
・統合の負荷
・コードのレビュー負荷
これらは人間がやらなければならないことですので、どうしても負担になります。それが不要であるBubbleの方が小規模案件では効率がいい、と考えます。(AI進化が激しいので来月は意見が違うかも。また来月も感想を書きますね。)
もちろん弊社もAIを使いますが、AIに丸投げして開発するのではなく、要件整理や技術周りの壁打ちなどに使いあくまで判断は人間です。
まだまだAI時代の開発手法は世界中が模索中ですが、より効率よくお客様のシステムが開発できるよう、日々検討していきたいと思います。
