2026年10月26日の日経新聞に、「多重下請けや役職定年…日本の生産性そぐ『民民規制』」という記事が掲載されていました。

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この記事では、日本企業に根付いている「多重下請け構造」と「役職定年」という2つの慣習が、生産性向上を妨げているのではないかと指摘されています。

僕自身、システム開発会社を経営していることもあり、特に多重下請け構造については以前から疑問を感じていました。

一方で、役職定年については、必ずしも悪い制度とは思えず、むしろ合理的な面もあるのではないかと感じました。

この2つの話を考えているうちに、最近歴史を学ぶ中で繰り返し感じている、ある共通点に行き着きました。

それは、かつて合理的だった仕組みが、時代の変化によって非合理的になってしまう。そして、その仕組みが優秀であればあるほど、そこから抜け出すことが難しくなるということです。

IT業界の多重下請け構造は、本当に必要なのか

IT業界には、元請け、2次請け、3次請け、4次請けといった多重下請け構造が存在します。

例えば、発注企業が1,000万円でシステム開発を依頼したとして、実際にシステムを開発している4次請けの会社には300万円しか渡っていない、というような構造です。

もちろん、これは説明のための仮の数字ですが、実際にこうした多重構造は珍しくありません。

しかも、4次請けの技術者が単純な作業だけをしているわけではなく、システムの設計や実装の中心を担っていることもあります。

では、間に入っている企業は何をしているのでしょうか。

もちろん、元請け企業が顧客との要件調整、プロジェクトマネジメント、品質管理、リスク管理などを担っているのであれば、そこには明確な価値があります。

僕自身、長年プロジェクトマネージャーとして仕事をしてきたので、これらの仕事が簡単ではないこともよく理解しています。

ただ、それでも4次請け、5次請けと何層も会社が間に入る必要があるのかというと、疑問です。

間に会社が増えれば、それだけコミュニケーションの経路が長くなり、意思決定にも時間がかかります。各社の管理コストも発生します。

仮に、実際に開発を担当している会社が、要件定義から品質管理、納品まで責任を持てるのであれば、発注企業と直接契約した方が効率的なはずです。

小さな会社だからこそ、直請けにこだわる

弊社CitrusAppは、小規模なシステム開発会社ですが、基本的にお客様と直接契約する形で事業を行っています。

これは独立して良かったと思うことの一つです。

間に何社も入らないため、お客様の要望を直接聞くことができます。

「この画面が使いにくい」「こういう機能を追加したい」といった声を直接受け取り、すぐにシステムに反映できます。

また、中間に入る企業の管理コストが少ないため、開発費用も抑えやすくなります。

さらに最近は、AIを活用した開発によって、従来よりも少人数でシステムを作れるようになりました。

以前であれば複数のエンジニアが必要だった開発も、AIを活用することで、かなり少ない人数で進められるケースが増えています。

こうなると、従来の多重下請け構造の必要性は、ますます小さくなっていくのではないかと感じています。

もちろん、大規模なシステムや高度な専門性が必要な案件では、複数企業が協力することに意味があります。

ただ、少なくとも中小企業向けの業務システム開発では、お客様と開発者が直接つながり、必要なものを素早く作って改善していく形が、非常に合理的だと感じています。

役職定年は、本当に悪い制度なのか

もう一つ、記事で取り上げられていたのが「役職定年」です。

例えば55歳になったら、部長や課長といった管理職から外れる制度です。記事では、こうした制度が今も大企業の約4割に残っているとされています。

役職定年の導入状況。大企業の約4割に残る(出所:東京商工リサーチ)

記事では、こうした制度がベテラン人材の能力を十分に活用できない要因になっていると指摘されています。

ただ、僕はこれを読んで、少し違うことも考えました。

役職定年には、組織の新陳代謝を促すという合理性があるのではないでしょうか。

例えば、優秀な部長がずっと同じポジションにいた場合、若い社員にはなかなか昇進の機会が回ってきません。

また、長期間同じ人が管理職を務めることで、権力や人間関係が固定化してしまう可能性もあります。

その点、一定の年齢で管理職を交代する仕組みがあれば、若い世代にもチャンスが生まれます。

さらに、能力不足を理由に管理職を外すのではなく、「年齢による制度なので」という説明ができるため、人間関係の摩擦を抑える効果もあるでしょう。

そう考えると、役職定年は決して無意味な制度ではなく、当時の日本企業にとっては合理的な仕組みだったのだと思います。

ただし、現在は状況が変わっています。

少子高齢化が進み、ベテラン人材の活用がますます重要になっています。55歳でも十分に能力が高く、管理職として活躍できる人はたくさんいるでしょう。

それなのに、年齢だけを理由に一律で管理職から外してしまうのは、企業にとっても損失になり得ます。

一方で、役職定年を廃止するだけでは、今度は若手にポストが回らない問題が生じるかもしれません。

例えば、管理職を任期制にして、年齢に関係なく定期的に適性を評価するという方法も考えられます。

重要なのは、役職定年が良いか悪いかという二択ではなく、その制度が解決しようとしていた問題を理解したうえで、今の時代に合った仕組みに変えていくことなのだと思います。

歴史を振り返ると、同じことが繰り返されている

最近、COTEN RADIO(コテンラジオ)などを通じて歴史を学んでいるのですが、こうした話は歴史の中にも繰り返し登場します。

例えば、イギリスの産業革命です。

イギリスは第一次産業革命で、石炭や蒸気機関、繊維工業などを発展させ、世界の工業大国になりました。

しかし、第二次産業革命では、電力や化学工業などの新しい産業でアメリカやドイツが急成長し、イギリスの優位性は相対的に低下していきます。

その理由はさまざまですが、一つの要因として、イギリスがすでに築き上げていた産業構造や設備、制度が、新しい技術への転換を難しくしたという見方があります。

既存の仕組みがうまく機能しているからこそ、それを捨てて新しい技術に投資する判断が難しくなるわけです。

一方、後発国は古い設備や仕組みを抱えていないため、最初から新しい技術を導入しやすい場合があります。

まさに「リープフロッグ(蛙跳び型発展)」ですよね。

よく言われる、日本では現金や銀行の仕組みが高度に発達していたことが、キャッシュレス決済への移行を遅らせた要因の一つではないかと言われたりしたように、戦後の日本が築いた終身雇用、年功序列、系列取引などの仕組みも、高度経済成長を支えた一方で、時代が変わった今では、変革を難しくする側面はありますよね。

実際、デジタル産業の労働生産性を見ると、かつて高い水準にあった日本が、米国・英国・ドイツに追い抜かれ、相対的に伸び悩んでいることがうかがえます。

デジタル産業の労働生産性(2019年=100の指数)。日本が米国・英国・ドイツに追い抜かれている(出所:日本生産性本部)

もちろん、過去の蓄積が今でも競争力につながっている分野もあります。

だからこそ難しいのです。

今ある仕組みのうち、何を残して、何を変えるべきなのか。

その判断は、成功している最中ほど難しいですよね。

うまくいっているときに、すでに失敗が始まっているかもしれない

歴史を学ぶ中で、特に印象に残っているのが「現状認識」の重要性です。

自分たちが今、歴史のどの位置にいるのか。

自分たちの強みは、これからも強みであり続けるのか。

今うまくいっているのは、自分たちの能力が高いからなのか、それとも、たまたま現在の環境に適しているからなのか。

こうしたことを正しく認識するのは、非常に難しいと思います。

特に厄介なのは、うまくいっているときに、すでに失敗が始まっている可能性があるということです。

売上も伸びている。お客様も増えている。社員も増えている。

だから今のやり方は正しいと考えてしまう。

しかし、その成功を支えている仕組み自体が、次の時代には通用しなくなっているかもしれません。

これは国家や大企業だけの話ではなく、小さな会社にも当てはまることだと思います。

CitrusAppも、今の成功モデルを疑い続けたい

弊社CitrusAppでは現在、AIを活用したシステム開発に力を入れています。

従来の開発方法に比べて、開発スピードやコストを大きく改善できるようになり、初期費用0円・月額制でお客様専用のシステムを提供するという新しいモデルにも挑戦しています。

今は、このやり方に大きな可能性を感じています。

ただ、だからといって、これが将来にわたって正しいモデルだとは限りません。

例えば、今後AIがさらに進化して、企業が自分たちで簡単に業務システムを作れるようになったらどうでしょうか。

そうなれば、現在のようなシステム開発会社の役割自体が変わっていくかもしれません。

今は新しいことに挑戦しているつもりでも、もっと大局的に見れば、すでに次の変化に乗り遅れ始めている可能性だってあります。

だからこそ、日々のニュースや技術動向を追いながら、AIも活用して、自分たちの事業にどのような影響があるのかを考えるようにしています。

単に新しい技術を知るだけではなく、それによって何が変わるのか、これまでの常識がどこから崩れるのかを考えることを大切にしています。

もちろん、正しく現状認識ができているかどうかは分かりません。

むしろ、できていると思い込むこと自体が危険なのかもしれません。

それでも、常に自分たちの立ち位置を疑い、考え続けることだけは忘れないようにしたいと思っています。

今回の日経新聞の記事は、多重下請け構造や役職定年という身近な問題から、そんな歴史や経営の難しさを改めて考えるきっかけになりました。

過去の成功を否定する必要はない。でも、過去の成功に縛られてはいけない。

これは、これからも大切にしていきたい考え方です。

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CitrusAppでは、お客様と直接コミュニケーションを取りながら、業務整理・要件定義からシステム開発、運用改善まで一貫して支援しています。

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