こんにちは、Wataruです。
今回は、デイヴ・グロスマン著の『戦争における「人殺し」の心理学(On Killing)』を読んで、感じたこと、考えたことを書いていきます。

この本は、著者が元軍人であることもあり、戦争を「外から」見るのではなく、実際に戦地に立った兵士たちの心の内側に深く入り込むような視点で描かれていました。
正直、読むのがしんどい場面も多いのですが、ものすごく考えさせられました。

人は人を殺したくない生き物だ

まず、この本の中で最も衝撃を受けたのが、第二次世界大戦中、アメリカ兵のライフル銃兵のうち実際に敵に向かって発砲した兵士は、わずか15〜20%だったという話でした。

つまり、戦場で「敵を撃て」と命じられても、8割以上の兵士が撃てなかったということです。
逃げたわけでも隠れたわけでもない。ただ、撃たなかった。
目の前に、突撃してくる敵がいても、撃てなかった。

これはもう、「人って本来、そういう存在なんだな」としか言いようがありません。
そういう生き物なのに戦争が始まってしまう、、、という悲しさがあります。

「殺される恐怖」より「殺すことの恐怖」

兵士たちは、殺す側であることにより圧倒的なストレスを受け、なんと98%が精神的にダメージを受け、メンタルをやられて帰ってきてしまう

しかし、であるならば兵士よりも訓練も何も受けていない一般市民はもっとダメージを受けて圧倒位馬に降参するだろうと目論見、空襲が始まります。

しかし、なんの反撃のすべも持たない、なんの訓練も受けてないない一般市民が空襲による爆撃を受けても、通常時と比べそれほどメンタルをやられた人は増えなかったというデータが紹介されています。

衝撃的ですよね。。

「殺される恐怖」よりも、「殺さなければいけない恐怖」の方が、人間にとっては重たい。

ああ、もしかしたら本当にそうなのかもしれないな、と思いました。

直接的な殺傷ほど、人間は壊れていく

そしてもう一つ印象的だったのが、「どういう殺傷のときに人はストレスを感じるのか」という話です。

要は、直接的であるほどストレスがかかり、間接的であるほどストレスがかからない、そうです。

目の前の敵をナイフで刺すような直接的な行為は、兵士にとっても本当に重いストレスになる。
一方で、遠くにいる相手をライフルで撃つ、さらに言えば爆撃機から爆弾を落とすという行為になると、距離があるぶん、心理的負荷はかなり軽くなるそうです。

距離が、罪悪感や人間性をぼやかしてしまう。
「人間って、そういうもんなんだな……」と、すごくリアルに感じました。

死亡率が高いはずの指揮官の方が兵士よりもストレスが少ない

一般に、指揮官は前面に出るので狙われやすく、他の兵士と比較し死亡率が確実に高いそうです。
にも関わらず、指揮官の方がストレスが低い。

要は、指揮官の方が直接銃で攻撃するシーンが少なく、一般の兵士の方が直接攻撃を命じられるためではないか、という話が印象的でした。

これも先ほどの、殺される恐怖よりも殺す恐怖が上回る話に関連するのかもしれません。

だから米軍は「撃てる兵士」をつくる方向に舵を切った

この「第二次世界大戦時には20%しか発砲できなかった」ことを問題視した米軍は、戦後、大きく訓練のやり方を変えていったそうです。

それまでは丸い標的に向かって射撃訓練をしていたのを、人型の的に変え、パブロフの犬のように反射的に撃てるように訓練する。
さらに、「殺人は悪いことではない」といった価値観を兵士に刷り込むような教育も取り入れた。

その結果、ベトナム戦争時には発砲率が95%まで上昇したそうです。

……読んでいて、ただただ「何てことしてんだ...」と思ってしまいました。

人を撃てないことが“問題”で、それを改善する。
目的のためとはいえ、それを“当たり前”にしてしまう教育。
何か根本的な部分で、取り返しのつかないものをこじ開けてしまったような気がして、とにかく恐ろしいです。

なんか、あまり良くないブラック企業に洗脳されて判断能力を失ってしまった社員もそんな感じかもしれないと思いました。


ビデオゲームと銃社会への問いかけ

本書の最後では、こういった「人を撃つことへの抵抗感」を削ぐような訓練が、今の社会にも波及しているんじゃないかという指摘もされていました。

たとえば、シューティングゲームなどで、日常的に人型の敵を“撃つ”ことを繰り返すカルチャー。
それが、現実の銃犯罪の一因になっているのでは?という問いかけです。

もちろんゲームが全て悪いとは思いませんが、
「無意識に人を撃つことに慣れる」という構造には、私もゾッとしました。

本当に人は、殺したくない生き物だ

全体を通して一番強く思ったのは、
やっぱり人は、人を殺したくない生き物なんだという、当たり前のことの再確認でした。

兵士たちが撃つのは、自分の命や仲間の命を守るためであって、
撃たないことが裏切りになるという重いプレッシャーの中で、それでも撃てない。
撃ってしまった人も、その罪悪感や葛藤で、戦争が終わってもずっと苦しみ続ける。

読んでいて、当たり前のように思えるそのことが、実はものすごく大事なんだと感じました。


最後に――戦争のない世界を願って

人はそもそも殺したくない生き物だ。98%の兵士がメンタルをやられる
でも逆に言うと、2%は適性がある人もいる、とも書かれていました。

それが何より怖いと思いました。
しかし、戦時中は数少ない適性を持ったそういう人たちの活躍に守られてもいるのかと思うと...

この本を読み終えて、あらためて思いました。
とにかく戦争のない世界を作りたい。

それを夢物語と思わず、私たち一人ひとりが目をそらさずに考えることが、まずは大事なのかもしれません。