今回は『男性学入門』という、ちょっと今まで聞いたこともない学問のタイトルの本をたまたま知ったので、買ってみました。この著者の方はトランスジェンダーの方で、もともと女性だったのが男性になったというタイプの方です。 それゆえに、生まれ育ったときから男性として教育を受けてきたわけではないが今は男性、という立場のため、その視点ゆえに感じる「男性はこうあるべきだ」というものに対する違和感や、「男性が履かされている下駄」への違和感などが興味深いと思いました。そもそも男性学とは何か、というところから始まり、 「男ってそもそもなんだっけ」「そもそも性別ってなんだっけ」「男性だと見なされないケースは何か」「男らしさのヒエラルキーとは何か」などが語られていました。 また、男性の歴史から見えてくるもの、近代における効能、男は戦争で作られたものであるという視点、男らしさの感覚が時代ごとに違っていたり、メンズリブの始まり、男性にはどんな特権がある、、、といった話、過父長制とは何か、、、といった内容が書かれている本でした。ここから、僕が気になったところをピックアップして書いていきたいと思います。男性の特権についていろんな興味深いことが書かれていたんですが、一つ一番大きいなと思ったのは「男性は下駄を履かされている」という話です。 男性であるだけで特権がある、そんな社会になっているという制度的特権について著者は語っています。それに対して、「いやいや、僕は男性であるだけで良いことがあったとは思えない。むしろ辛い」という声もあるそうです。 それに対して著者は不思議に思ったと。なぜなら、ほとんどすべての男性が「女性差別を受けなくて済む」という一点だけでも十分な特権を得ているように見えていたから、だそうです。なるほど、と思いました。女性差別を受けなくて済むこと自体がすでに大きなメリットである。性別を理由に性暴力に怯える必要がないということだけでもメリットだと。そういう視点で自分が男性であることを振り返ったことはなかったので、とても勉強になる話だなと思いました。ただ、この辺は自分にとって少し実感が湧きにくいところでもありました。 僕の周りだと、女性だからという理由で仕事につけない人はいないように見えていたし、自分が採用・発注する際は性別を意識する必要もなく、スキルで選んでいました。最近の職場でも女性率はかなり高く、男性と同じくらい女性もいる。うちの夫婦は共働きで特に妻の方に負担があるわけでなく、そんな家庭も増えている。だから「女性であるから不利益を受ける場面は結構少ないのでは?」と思っているところはありました。どこか、特別に意識が遅れている地域の話かな?と錯覚してしまうんですよね。でも、それはたまたま僕がそういう環境にいるだけかもしれないし、今の環境の中でも苦しみながら働いている人がいるのに僕が気づけていないだけかもしれない。そういう可能性に改めて気づかされる話でした。ではどうしたら良いのか?この本でのテーマは多岐に渡り、男性の歴史と現状を書かれています。ただ、では男性はどう生きれば良いのか?という点は特に書かれていないように読めました。うーん、、、どうしたら良いのか。特に性差の問題、解決したいものです。例えば、「差別はたいてい悪意のない人がする」という本をだいぶ前に読んだのですが、この本以下のような話がありました。・工学系の大学は9割男子で、1割しか女子がいない。・福祉系の大学は9割女子で、1割しか男子がいない。そして工学系の方が給与の高い仕事につけ、福祉系の方が給与が低いことが多い。これは差別か?どう思いますか?どちらの大学も、性別による人数制限をしているわけではない。ただ女性は工学系に行きたがらず、男性は福祉系に行きたがらないだけ。自分の意思で選んでるのだからそれは差別ではない。と思ってしまいがちじゃないですか?僕もそうでした。でもその本では、社会全体が「男性が工学系に、女性が福祉系に行く方が当たり前だ」と思うような文化を作ってることが差別だ。のようなことを言っていました。(だいぶ前に読んだので若干曖昧ですが。。)これ、どう思いますか?僕も確かに、、、って思いました。ただそのレベルで差別だと言われると、個人レベルでは何も対応できないのも事実ですよね。。非常に難しい話ですが、「社会全体がどうあるべきか」「どんな施策を打つべきか」でいうと大きすぎて関わりにくいです。しかし、個人レベルであるならば、自分の子供には性別を関係なく好きなように育てるということはできますよね。まずできることはそれしかないかなと思いました。また、実際に今そのような状態で、性差別があるのは事実だと思います。でも世界全体が中性的になっていっている気がするのですが、それも事実ではないですかね?何を言いたいかというと、一発具体的な施策をいきなり打つことは難しいですが、そんなことをしなくても世界は少しずつ中性的な方に、性別が無い方に向かって進んでいっている気がします。この本の中で戦争が男らしさを作った、のように書いていましたが、逆に、戦争がなければ、平和な時間が長く続けば、そういった悪い意味での男らしさは無くなっていくのでは無いかと思います。ディストピアの例:逆に、強引に性別を無くそうとすると、ディストピア系の物語のようになってしまいそう。。例えば「世界99」や「コンビニ人間」で有名な「村田沙耶香さん」の「消滅世界」では、テクノロジーが発達した世界になり以下のような世界を作っています。子供はすべて体外受精男性も妊娠することができる自分が産む子供は誰の精子と卵子かわからない。(誰の子でも関係ない)生まれてくる子供はすべて「子供ちゃん」と呼ばれ、街の人すべてで育てる。街の人はすべて老若男女だれでも、「おかあさん」と呼ばれる。どうでしょう?ここまでやったら完全なフェアな世界になりそうですよね?笑こんな気持ち悪い世界は嫌だっていう人も多いですよね。でも間違いなくフェアな世界にはなるので、この思考実験は面白かったです。さすが村田沙耶香さんですね。話がそれました。まとめると、世界全体を一気に変えることは難しいと思うけど、個人レベルだとできることがありそうだから、そこから頑張ろう!と思いました。