今回は『ドイツ人のすごい働き方』という本について感想を書いていきたいと思います。帯には「日本の3倍休んで成果は1.5倍の秘密」と書いてあり、手に取ってみました。GDP世界3位のドイツは、生産性が下がる一方の日本と比較し、なぜこんなに生産性を高く維持できるのかという点ですね。普段はこういう“仕事術”系の本とか、いわゆるビジネス自己啓発っぽい本って、あんまり買わないんですが、たまには流行や世の中の考え方をキャッチアップしようかなと思って読んでみました。ただ、結論から言うと「昔から言われているよくある話が多いな」という印象でした。「昔から言われているけど、みんなできてないこと」みたいな。たとえば…脳をリフレッシュさせるために散歩したほうがいい会議にはアジェンダと議事録を事前に用意して、発言する人だけ参加させる会議の終わりの時間をちゃんと決めて短く終わらせる長期休暇を取って「脳を空っぽにする」ことで超回復するのがドイツ流マインドフルネスジョブ型雇用で専門性を磨くのが大事リスキリングの仕組みが整っているホワイトボードやブレストの活用で発想を刺激する定例会議は本当に必要か? 無駄な会議はやめようサーバントリーダーシップや、上司とのオープンなコミュニケーションクレーム対応では感情と論理を分け、論理的に対応「空気を読む文化」から脱却して、文脈を共有した上での行動が大切同じミスを繰り返さない仕組みを作ることが大事完璧を目指すよりも「8割で良し」とする考え方(パレートの法則うんぬん)仕事の“棚卸し”をして見える化し、俗人化しないように目の前の業務をこなすだけの“フロー型”ではなく、資産になる“ストック型”に転換すべき自分自身をブランディングしていく重要性…などなど、まさによくある仕事効率化Tipsがずらりと並んでいる感じでした。とはいえ、頭では分かっていても実際にできている会社は少ないよね、というのはその通りだと思います。もしドイツの会社が当たり前のようにできているのであれば、我々の生産性が上がらないのも納得です。私自身も「確かにうちの会社でも、ちゃんと実践できているか?」と問われると、できていないことの方が多いなと思うので、振り返りをするにはちょうどいい感じでした。というわけで、全体としては「よくある話がまとまっている本」という印象ではありましたが、あらためて自分の行動を見直すきっかけにはなりました。今回はその中でも、特に自分が「面白い」「気になった」と思ったポイントをいくつかピックアップして、次のセクションで紹介していこうと思います。「ドイツの朝は6時に始まる」から見える、効率的な働き方この本の中で一つ良かったなと思ったのが、最初に出てくる「ドイツの朝は6時に始まる」という章です。実際、ドイツでは朝6時くらいに出勤して、午後3時くらいにはもうその日の業務を終えるという働き方をしている人が結構多いそうです。特にフレックスタイム制を活用していて、残業は一切しないというスタイル。夕方の時間は家族と過ごしたり、自分の趣味に使ったりと、しっかりとプライベートの時間を確保している。この話を読んで思ったのは、「こういう働き方ができるってことは、常に一緒にいなきゃ進まないような仕事の仕方じゃないんだな」っていうことです。つまり、マネージャーと部下が同じ場所・同じ時間帯にいなければ進まないような、依存性の高い仕事の仕方じゃない。きっとコアタイムはあるにせよ、それ以外の時間はそれぞれが独立して動けるように、タスクやロールがしっかり切り分けられているんでしょうね。マイクロマネジメントしなくても回るような仕組みがあるということだと思います。これは良いことだなと感じました。私の会社も、メンバーは全員リモートで、複業・フリーランスの方だったりと、働き方がバラバラなチーム構成で普通に成り立っているので、ある程度は似たようなスタイルが実現できているのかもしれません。そこは弊社の強みだとも思います。とはいえ、本書の後半でも出てくる「属人化を防ぐためのドキュメント化」や「作業フローの明文化」など、私たちがまだできていない部分も多くあるなとあらためて感じました。裁量があるというのは聞こえはいいけれど、結局は属人化しやすいという側面もありますよね。このあたりは少しずつ改善していかないといけないなと思っています。あと個人的には、朝型の働き方ってやっぱりいーなーも思いました。私自身も以前は朝早く起きて作業するのが一番はかどると感じていたんですが、最近はどうも眠くてうまくいってないので(笑)、この本を読んでちょっと反省しました。改めて朝型生活に戻していきたいなと思います。作業空間が思考に与える影響について次に読んでいてちょっと気になったのが、「開放感あふれる広々とした執務スペースがある」という話です。ドイツのオフィスでは、まず最高の環境を整えるところから仕事が始まる、と。で、その中で「思考のスケールは作業スペースの広さに比例する」っていう話が引用されていました。正直、この言葉の信憑性がどこまであるのかはわからないですが、直感的には確かにそうかもしれないな、という気持ちになりました。実際、今の自分の部屋ってとにかくごちゃごちゃしていて、広々とした空間で作業している感じは全くしない。視界に物が多いと集中が削がれるような感覚もありますし、「脳内がごちゃついている感じ」とリンクするような気もしました。だからこそ、広い空間に身を置いたときに、ちょっと思考が伸びやかになるという感覚、確かにあるなと。これって、「自分の思考を物理的な空間に投影している」みたいなところがあるのかもしれませんね。ドイツ人が片付けに命を懸ける理由本の中で「ドイツ人が片付けに命を懸ける理由」というタイトルのセクションがありまして、これがなかなか面白かったです。なんでも、ドイツのオフィスではすべてのデスクが驚くほど整然としていて、まるで新品のような状態なんだそうです。そして、ドイツには「人生の半分は整理・整頓」ということわざまであるとのこと。いや、そこまでか…!と思いますが、どうやらそれくらいドイツでは整理整頓が文化として根付いているようですね。実際、ドイツ人にとって整理・整頓は「生活の基本」であって、小さい頃から親に徹底的にしつけられて育っている人が多いとのこと。特に面白かったのは、「机の上は頭の中を表す」という考え方です。仕事を終えて帰る前に机をきっちり片付けることで、頭の中もリセットする。これはちょっと共感しますよね。実際、机がごちゃごちゃしてると、なんか思考まで散らかってる感覚ありますし。さらに驚いたのは、家庭内でも「なぜ整理整頓が大事なのか」「なぜ片付ける必要があるのか」について、親と子どもが徹底的に議論を交わすということ。つまり、単なる命令ではなく、子ども自身が納得したうえで習慣として身につけていく。結果的に、それが職場にも自然と持ち込まれるというわけですね。いやあ、これは見習いたいなと思いました。そしてこの話を読んで、僕は思い出しましたよ、コンマリメソッド。大晦日にこんまりメソッドの本に従い頑張って一気に片付けたはずが、今やまた机の上はごちゃごちゃ。これはつまり、僕の頭の中も今ごちゃついてるってことか…とちょっと反省です。屁理屈をこねてないで、もう一度しっかり片付けをしよう。ドイツ人とコンマリ、両方を見習って、まずは目の前の整理整頓から始めたいと思いました。駅に改札がないドイツの仕組みと効率の良さこの本でかなり大きく取り上げられていたのが、「ドイツの駅には改札がない」という話です。実は僕も去年、フィンランドやエストニアに行ったんですが、確かにそれらの駅にも改札はなかった記憶があります。つまり、誰でもそのままホームに入れて、理論上はチケットを持っていなくても電車に乗れちゃうわけですよね。でもその代わり、抜き打ちで車内チェックがあって、もしチケットを持っていないことがバレると、60ユーロ、つまり日本円で1万円くらいの罰金が課されるという仕組みになっています。こうすることで、自動改札機を設置するためのインフラコストが不要になって、駅での混雑もなくなる。つまり、全体としての運用がとても効率的なんですよね。僕はこの仕組み、すごく合理的でいいなと思いました。もちろん、無賃乗車をする人も一定数いるのは事実で、2023年のベルリンでは発覚しただけで27万人もいた(結構多いw)そうです。それでも、それを踏まえてなお「改札を置かない」ほうが効率が良いという判断をしているわけです。こういうのって、まさに「100点を求めない仕組み化」の好例だと思うんですよね。日本ではどうしても「すべての不正を防ぐ」とか「完璧を求める」傾向があるけれど、それをやろうとすると、かえってコストがかさみ、生産性が下がってしまう。100点を目指すのではなく、むしろ「ある程度のロスを許容しつつ全体最適を目指す」ことで、もっと効率的に社会は回るんじゃないか。これは駅の改札に限らず、あらゆる分野で応用できる考え方だと思います。つまり、生産性を上げることは、品質を下げる勇気、ではないかなと。100点を求めない勇気。自分の仕事のやり方や、チームの仕組みにも活かしていきたいと思いました。