今回は『遅読のすすめ』を読みました。『遅読のすすめ』を『速読』で読みました(笑)。タイトルに惹かれ購入。帯には「時間をかけた読書だけが本物の教養になる」と書かれています。まさに今のショート動画全盛時代、コンテンツが溢れ、全般的に世の中が急ぎすぎているなと感じます。倍速で動画を見たり、急いで速読して本を読んだり、要約だけ見て中身を読まない――そんな生き方が当たり前になりつつあって、私自身も少し疲れてきたところでした。以前紹介した『スロールッキング』もでも言っていますが、ゆっくりじっくり見たり考えたりすることは本当に重要だと思います。そんなタイミングでこの本を見つけ、興味を持って読んでみることにしました。時間をかけて見るから「フランダースの犬」も感動するこの本では、物語に感動するには時間をかける必要があると書かれていて、私もまさにその通りだと思います。例えば、私が子供の頃にアニメでやっていた『フランダースの犬』。この作品でもその話が引用されていますが、内容だけなら短くまとめられてしまう。今なら「あらすじ」を見れば30秒もあれば説明できるような話ですよね。『母をたずねて三千里』なんかも同じです。でも当時は、アニメの放送に半年から1年かけて、子供たちは毎週少しずつ物語を追いかけていました。だからこそ最終回、ネロとパトラッシュが念願のルーベンスの絵の前にたどり着き、天国に召されるあの場面で、大きな感動と涙があったのだと、著者は述べています。たしかに、「ため」は重要ですよね、、、!ゆっくり、じっくり時間をかけて見たからこそ生まれる感動です。映画を3倍速で見て同じように泣けるか、といえば無理な話ですよね。著者はそういう「時間をかけたからこそ価値がある」体験があると強調していて、私も完全に同意です。速読と遅読の使い分けが重要著者は速読を否定しているわけではなく、本の読み方には大きく2つあって、ギアチェンジが必要だと言っています。つまり、速読すべきものと、ゆっくり読むべきものを切り替える必要があると。例えば、新書のような軽めの本なら簡単に読めるので、著者の場合は20分ほどで読んでしまうこともあるそうです。(はっや!羨ましい!)しかも一度に3冊買って、喫茶店やカフェで1時間かけて読むのが日常。多いときには1日10冊読むことあるとのこと。(すげー!羨ましい!)一方で、1冊の本に1年以上かけることもあるそうです。著者が『論語』を現代日本語訳したときには、なんと2年間持ち歩きながら読み続けたとのこと。まるで孔子と一緒に旅をして、その言葉を直接聞くような感覚で取り組んだそうです。時間をかけることで内容が自分の中に染み込み、漬物のように味が深くなる――そんなイメージだといいます。この感覚は、私も漫画に関してならすごくわかります。何度も繰り返し読む漫画は、セリフまで覚えてしまうほど血肉化していますし、同じ作品を10周20周と読むタイプなので、その「染み込み感」は実感としてあります。昔のジャンプ連載のように、毎週少しずつ読み進め、新刊が出るまでの間はそれまでの単行本全巻を何度も読み返す。だからこそ新しい展開に出会ったときの感動や衝撃が大きいんですよね。著者は、論語や聖書、源氏物語のような数百年、千年と読み継がれてきた本は「遅読モード」でじっくり味わい、逆に毎日新しく出る新書類は「速読モード」で読むべきだと強調しています。なるほど、と。であれば「遅読のすすめ」を「速読」で読んだのは正しかったですね!遅読の技術:9つのポイント次の章では、「知読」とは何か、つまり速読の対局にある“深く読む”技術について、著者が挙げた9つのポイントが紹介されていました。ゆっくり歩くように読む味わうように読む“すごい一言”に出会ってしまう読み方ひらめきを可能にする読み方現実の世界と並行しながら本の世界に没入する経験よみがえらせることのできない時間に出会う読み方日常生活から離れて心を洗う旅音読でライブコンサートになる解釈を加えず作品そのものを味わうことタイトルを見ただけでも著者の意図が伝わってきますよね。「ゆっくり読んでインスパイアされる」「登場人物の感情を深く味わう」「最高の体験として読書を楽しむ」ということかなと僕なりに理解できる気がしました。中でも面白かったのは「音読」についてのエピソードです。著者は夏目漱石の『坊っちゃん』を、200名の小学生とともに6時間かけて1日で音読したことがあるそうです。「全員で」です。そのときの盛り上がり、爆笑や歓声は忘れられないとのこと。(それ、盛り上がるんだ!見てみたい!!)200人で同時に音読しながら進むのは、まるで全員で山に遠足に出かけるようなもので、一文字一文字を踏みしめながら進む感覚だったそうです。これは確かに面白そうで、一度やってみたいと思いました。(一体どうやってその人数を集めそれだけの時間を拘束し音読するのか、、、それも含めてめちゃくちゃ興味深いですね)もう一つ印象的だったのは9番の「解釈を加えず作品そのものを味わうこと」。これは以前読んだオードリー・タンの本「私はこう思考する」で話していた内容にも通じる考え方だと感じました。オードリー・タンは、「最初から最後まで集中して読むことが大事。読みながら内容について判断したり、頭の中で自分の観点を整理したりしてはいけない」と言っていました。途中で「この本はこうだな」「こういうことを言いたいんだよね」と自己解釈してしまうと、自分のもともとの思想を補強するだけになってしまう。だからこそ、主観を挟まず、作者の言葉をそのまま受け止めることが大事だという考え方は、どちらの著者も共通していると感じました。膨大な量のおすすめ本本書の後半は、「遅読」に向いている本のジャンル別おすすめリストがずらっと並びます。正直、「本の中で本を紹介してくれる」は本当に困るんですよね(笑)。オードリー・タンの本のときもそうでしたが、本の中で紹介された本やゲームをつい買ってしまって、積読がどんどん増えていく、、、(いや、紹介されて有難いんですけどね!ものすごく。)今回も例に漏れず、「これは勉強になる」「読んでみたい」と思わせる本が大量に登場します。しかも遅読にオススメな本、つまりじっくり時間をかけるべき本ばかりなので、着手できるのは一体いつになるのか…という悩ましい気持ちでいっぱいになります。あ、そういえば、「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」で有名な三宅香帆さんが何かの動画でこう言っていました。「ツンドクを恐れる必要はないんです。家に図書館を作るつもりで買えばいいんです。」と!なるほど、と!これは強烈なパワーワードでしたね!ツンドクをおそれず、自分の図書館に欲しい本を買えばいいだけ!あとになって「いやーこの本いい本揃えてるなー、あ、これいいじゃん。読もう」って思えるような図書館を作ればいいだけってことですね!ということで自信を持って買っていきたいと思います。この本で紹介されていた本紹介されている本は、例えば以下のような感じでした。松尾芭蕉『奥の細道』、小林一茶、谷川俊太郎、中原中也『地獄の季節』、乱歩作品集、『源氏物語』、『枕草子』、樋口一葉、『ソクラテスの弁明』、デカルト、アリストテレス『ニコマコス倫理学』『詩学』、宮本武蔵『五輪書』、ゲーテ『格言集』、シェイクスピア『マクベス』、『サザエさん』、オー・ヘンリー傑作集、『若草物語』『ゲド戦記』『アラビアンナイト』『千一夜物語』、アガサ・クリスティ『そして誰もいなくなった』、エドガー・アラン・ポー全集、『戦争と平和』『トリストラム・シャンディ』『羅生門』、ホメロス『イリアス』『オデュッセイア』などなど…。どれも有名で一度は耳にしたことのある作品が多いですが、手を出せずにいるものばかりです。「まずは『徒然草』から読んでください」なんて書かれてたりして、確かに読みたくはなるのですが、、、と悩みは尽きません。結局、また積読が増えそうな予感しかしないのですが、図書館を充実させるため恐れず購入しますか。。これからは知読と速読をうまく使い分けながら読書を楽しみたいなと思いました。