『バター』を読み始めたきっかけと第一印象今回読んだゆずきあさこさんの小説『バター』は、YouTube のpage turners(ページターナーズ)という本紹介チャンネルで知りました。動画内でこの作品が取り上げられていて、なんと現在では 世界で100万部突破、特に海外で大きな評価を受けていると紹介されていました。特に印象的だったのはイギリスでの反響です。イギリスでは本屋大賞にあたるような主要な文学賞をいくつも受賞し、“三冠”を達成。さらに、ロンドン最大級の巨大書店では、最も目立つ入り口の場所にこの「BUTTER」がずらりと並べられていました。そこで今回、自分でも読んでみようと思い立ち、本を手に取ることにしました。今日は、その読書の最初の感想を書いてみたいと思います。男性を騙し続ける、とある女性のお話この本は、とある梶井真奈子という女性が次々に男性を騙し、お金をむしり取っていき、その男性たちは最終的に不審な死を遂げる……という事件から始まります。3人連続で男性が亡くなり、やがてその女性は捕まり、有罪判決を受けながらも控訴中で留置所にいる──そんな状況が物語の出発点です。彼女が大きな社会ニュースになった理由は、見た目が特に美人でもなく、むしろ太っていて、世間的な「男性を虜にする女性像」とは真逆だったこと。それにもかかわらず、なぜ多くの男性が彼女に夢中になり、財産を差し出したのか。この「なぜ?」が大きなテーマとして描かれています。料理とバターのモチーフもう一つ印象的なのが「料理」です。タイトルにある通り、この女性と料理、特にバターが密接に関わってくるのが面白いところです。物語の主人公は、新聞記者の女性。彼女はキャリア志向でバリバリ仕事をこなすタイプですが、そのためか、家庭的・女性的と一般に思われるようなことは行わず、料理経験もほとんどありません。一方で、男たちを魅了していく梶井真奈子は、むしろ「女性はこうあるべきだ」と堂々と語り、料理を中心に価値観を押し出します。例えば彼女は主人公に向かってこう言います。「あなたの冷蔵庫には何が入っているのか教えてくださらない?」主人公が「野菜ジュースと栄養ドリンクと……マーガリンくらいですかね」と答えると、彼女はすぐさま、「ねぇ、今、マーガリンっておっしゃった?」と過剰に反応します。 マーガリンなんてバターよりずっと体に悪い、まがい物だと、マーガリンとバターについて語ります。そして強い口調で「バター醤油ご飯を作りなさい」と勧めます。しかも「エシレの有塩バターを使うの」とブランドまで指定。炊きたてのご飯にバターを落とし、醤油をひとかけして食べる。まずあなたはそれをすべきだと。「エシレのバターの醤油ご飯」を実際に食べてみた感想その言い切りがあまりにも力強く、僕自身も読んでいて影響され、つい「エシレのバター」を買ってしまいました。100gの小さな塊で1600円ほどもする、、、たかっ!Amazonで即ポチッとして購入しました。これを炊きたてご飯にのせて醤油をかけて食べてみました。確かに濃厚で美味しい。醤油とご飯との相性も抜群。確かにいける、、、!ただ同時に「これは体に悪い笑」とも感じ、後半は胸焼けがしてしまいました。こういう描写も面白かったです。ダイエットに対する持論「ダイエットほど無意味でくだらなく、知性とかけはなれた行為はありません」と堂々と持論を語ります。まぁ、確かにその通りかもですね。病気に成る程太るのはまた違いますが、少しぽっちゃりしている分には性別を問わず過剰に気にする必要はないですよね。小太りの方が長生きするという話もありますが、そんなことよりも見た目を気にして食べたいものを食べないのは確かに過剰反応ですよね。見た目に対する世の中の目この本では「太る」ことなど「見た目」に対する周囲の目の厳しさもかなり描かれています。この「男性を騙す女性」がこの世界でニュースになっていたのも、「なぜこんな太っていて美しくない人がそんなに次々と相手を騙せたのか」という、太って美しくないことに対する気持ちが大きい。主人公は、エシレのバターご飯や他のカトルカールなどの料理を進められるにつれ、少しずつ太っていきます。元が痩せすぎなのでちょうどいいくらいですが、会社ではそれを奇異の目で見られ、恋人からも「それ(太ること)だけはやめた方がいい。自己管理ができていないと思われるから」と、指摘を受ける。太ると自己管理ができなく仕事ができないと思われる。。確かに、これ以上ない「余計なお世話」だ。でも、自分自身、体重が増えると戻そうとして運動量を増やしたり食事をある程度は制限しようとする。それは何のためか?と問われるとなんだろう。。自分の場合は、自分が今の見た目が好きだから、かなー。太ってると似合う気がしない。自分は男性ですが、例えばプロレスラータイプの体型で太ってる人はむしろ憧れる。あれは太っているというより「でかい」って感じでかっこいい。その上で包容力もありそうなおおらかな印象を与えられる。そういう太り方ができるなら太りたいが、自分の場合は地獄の餓鬼のような腹の出方をしそうでそれが嫌だ。。という理由かな。話がそれた。みんな自分のことだけ考えれば良いのだが、人目が気になりすぎる。そして周囲も人の見た目を気にしすぎる。ああ、なるほど、そういう意味で最近はルッキズムの考えが広まってきているのかな。恵比寿のガストロノミー ジョエル・ロブション今度はそこに行きなさい、との指示がくる。そうすると主人公だけではなく僕も行かなくてはという強迫観念に襲われるくらい、この本や秀逸にできていると思う笑いつか記念日などに行ってみたいと思ってまずはネット検索してみると、予約がいっぱいで全く空きがない...すごいな。。カトルカールのケーキカトルカールのケーキを作りなさい、との指示もくる。カトルとはフランス語で四のこと。カトルカールは四分の四。つまり、卵、小麦粉、バター、グラニュー糖。すべて同じ分量だけ使うバターたっぷりのパウンド型ケーキ。とのこと。読んでるだけで作りたくなる。しかしそのスキルは僕にはない。しかし、この話をしてたら、なんと、翌日友達が作ってくれた...!感動的な体験。ここ数年で最大の感動かもしれない。BUTTERを読みながらカトルカールのケーキを頬張る。最高の時間。まとめ:もっと爽やかに生きようこの話をまとめると、僕の感想は、正直なんとも言い難いものでした。この梶井真奈子という女性は、次々と男を騙していく存在として描かれています。彼女の主張は、「女性らしく男性をもてなし、決して凌駕しないことが大事」「全ての女は女神になればいいのだ」といったものです。つまり、そうしたあり方こそが、女性にとっても男性にとっても幸せにつながるのだと語っているわけです。もちろん、この小説のメッセージとしてそれが正しいと言っているわけではありません。むしろ、主人公の新聞記者の女性はその言葉に振り回されながらも、料理や人間関係を通して新しい感覚を身につけ、世界を広げていきます。例えば、今まで一度も自分のために料理をしたことがなかった彼女が、料理を経験し、誰かに振る舞うことで自分の中の新しい世界を発見していく。美味しいものを食べて太っていく自分を、かつては受け入れられなかったのに、やがてそれを肯定できるようになる。そうした自分を受け入れるようになっていく過程も描かれています。また、恋人や友人との関係性も揺れ動きます。理想的な恋人のはずが、その何気ない発言がなぜか心にざらっと刺さり、理由がわからないまま受け入れられず、結局別れてしまう。別れた後にも、立ち直るためにあえてその恋人を自宅に呼ぶという複雑な行動をとる。また、別のシーンでは、とある友人が妊活に集中しすぎるあまり、夫婦の心が離れていく場面。夫婦愛と子供への欲望の間で揺れる葛藤。離婚した父と娘が様々な圧力で会えなくなるが、ふとしたきっかけで再びつながりを取り戻す場面。――そうした人間関係の機微が次々に描かれていきます。人間の複雑な感情や人間関係が重層的に描かれている。そんな印象を受けました。ただ、僕自身が一つ思ったのは「みんなもっと明るく、さっぱり生きてもいいんじゃないかな」ということです。ちょっと考えすぎ、悩みすぎかも、、、と。もちろん、この小説が描くようなざらっとした感情や複雑さに共感する人が国籍を問わず多いからこそ、世界中で100万部以上売れているのだと思います。この微妙で複雑な気持ちに振り回されながら生きる姿に共感する人が多い。そしてこの本は、その感情の動きの繊細な描写が非常にうまい。だからこそ、ここまで評価されているのだろうなと思いました。