今回は三宅香帆さんの『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』の感想を書いていきたいと思います。私はそもそも三宅さんのキャラクターや発信内容が好きで、この本もめちゃくちゃ影響を受けました。三宅香帆さんは最近はYouTubeなどでも引っ張りだこのようで、読書キャラとしてかなり人気ですよね。まず何よりもこの本のタイトルがとてもキャッチーです。「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」──まさに私自身が抱えていた悩みでした。読書好きというより「読書好きになりたい」人間ですが、「けれど時間がないし読むのも遅いしでなかなか読めていない」という非常によくあるタイプの1人として、タイトルに惹かれました。著者の経歴とタイトルへの期待三宅さん自身も、大学時代は毎日本を読んでいたのに、リクルートに就職してからは一冊も読めない日々が続いたことに疑問を感じ、結果的に独立したといいます。この本のタイトルを見れば、「本を読むためのノウハウや時間術が紹介されているのだろう」と思って手に取る人が多いはずです。私もその一人でした。しかし、実際には全く違う内容なのが、、、これが熱いですよね。第1章~第8章:読書史を通して読む意味を問う本書の第1章から第8章までは、明治・大正・昭和・平成といった時代ごとに「どんな本が売れていたのか」「どんなジャンルが流行ったのか」を丁寧に追っていきます。最初は「読書文化の歴史」として楽しく読んでいました。例えば、自己啓発本や英語学習本の流行が何度も繰り返されていることなど、現代の読書ブームが過去とさほど変わっていないことに気付かされ、とても面白いです。しかし、章が進むにつれて「これ、まだ本題に入らないの?」というモヤモヤが募ります。全10章あるうちの8章までがずっと歴史の話。内容は面白いけれど、期待していた「本が読めるようになるハウツー」のテーマに一切触れないのでだんだん焦れったさを感じ始めました。焦ったいのに8章まで来てもまだ歴史の話です。。本当にこれまとめる気があるのか!?とも思い始めました。そこで9章です。第9章~第10章:ようやく語られる「読書ができなくなる理由」そしてようやく第9章からが本題。ここで一気に腑に落ちる展開が訪れます。我々はGoogle検索やSNS・動画検索に慣れすぎてしまい、「ピンポイントで答えを得る情報収集」に依存しきっています。しかし、読書はそうではありません。多くの部分がノイズで、そのノイズの中にこそ価値がある。つまり、私は「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」という答えを探して本書を手に取ったのですが、結果的には長い前振りともいえる読書史を読まされる構成。その体験自体が、「ノイズの中にこそ教養がある」という本書のメッセージそのものであり、それを読者に体験させる非常に巧みな構成だったわけです。めちゃくちゃ腑に落ちました。ネット検索による情報と本による情報の違い。このノイズ要素が、ピンポイントで検索していた時には知ることのできない出会いが、本にはある。そういう話です。(ただ、この本が売れてる理由については今ひとつ腑に落ちない感じもあります。僕は最終的にめちゃくちゃ納得しましたが、単に読書ハウツーを求めてる人がこれを見ると「なげーよ」とか「この情報いらない」ってなってしまう人の方が多いのではないかなと。三宅さんもわかっている通りショート動画時代の我々にとってピンポイントの情報収集以外そもそも受け付けられなくなってる人が多いはずなので。。 やはりタイトルのキャッチーさと三宅さんのキャラクター、同じ悩みを抱えている人の多さとマーケティング力など、すべてが合わさってこのブームなんでしょうね。)結論:全身全霊ではなく「半身」で働こう最終章では「全身全霊で働くのをやめませんか」という提案がなされます。著者は「半身社会」こそが新しい社会の在り方であると主張します。つまり、フルパワーで働けば本を読む時間など確保できるはずもない。だからこそ、意識的に「読書するための余白」を残した働き方が必要なのです。フルパワーではなく「半身で」働く。本が読める働き方をする。これは刺激的なパワーワードです。私自身の変化と取り組み私自身、会社を経営していてフルパワーで働くことが求められる毎日ですが、やはり読書は人生を豊かにするものであり、その時間を確保したいと強く思います。そのための施策として、私はほぼ毎日カフェに行くことにしています。食事のあと、コーヒーを飲みながら最低30分、できれば1時間読書をする。それを習慣にしています。このブログで書いているように、その時間を積み重ねることで、少しずつ読書が習慣になってきたと感じています。この本が、その大きなきっかけになったことは間違いありません。三宅さんのおかげで、「読書をするために時間を割く」ことに自信を持てるようになりました。どうしても目先の作業を優先させたくなってしまいがちなところを、今では自信を持って読書時間を確保しにいけます。三宅さんの文章力とリサーチ量にも感服もう一つ感動したのは、三宅さんの圧倒的なリサーチ力です。第1章~第8章に出てくる情報量を見てもわかりますが、彼女はとにかくよく調べ、よく読んでいます。彼女の別の著書である『母が娘を殺すには』や『「好き」を言語化する技術』でも感じましたが、その読書量とオタク的なまでの探究心には本当に憧れます。最近はYouTubeでも月に読んだ本を紹介していて、その読書量も尋常じゃないですし、そこから自分もこうありたいと思わせられます。おわりに:読書と仕事、どちらも大事にするためにこの本を通じて、読書の重要性に改めて気づかされました。だからこそ、意図的に勇気を持って読書の時間を確保する。読書はノイズに見える時間にこそ価値がある。その余白が、私たちの人生に教養と豊かさを与えてくれる──そんな気づきを得られる素晴らしい一冊でした。