こんにちは。代表のWataruです。今回は、「現代アートがよくわからない」という自分自身の悩みから手に取った一冊、『現代アートがよくわからない人のための楽しみ方』についてご紹介したいと思います。私は元々アートにあまり触れてこなかった人間で、特に現代アートに対しては「これ、いったい何を表しているんだろう?」「これをみていったい何を感じたらいいんだろう...」と、見ても何の感情も湧かないことが多くありました。そんな中で出会ったのがこの本です。「型」を知るとアートが楽しくなるこの本のキャッチコピーは、「“何これ?”が“なるほど”に変わる9つの型」。現代アートにも“型”があり、それを知ることで楽しみ方が変わるという内容でした。これは非常に興味深く、和歌のエピソードを例にとって説明されています。かつて木野貫之(きののつらゆき)が『古今和歌集』をまとめた際、和歌を読む際に「季語を使う」などのルールを整備したことで、和歌は爆発的に流行したと言われているそうです。自由すぎるよりも、一定のルールや型があった方が人々に受け入れられやすく、理解もしやすかったというのです。アートも同じで、型を知ることでその作品の見方が変わり、より深く楽しめるというのが本書の主張でした。具体的な「型」の例本書で紹介されていた型の一部をご紹介します。作品の中の世界をそのまま楽しむ型絵の中に描かれた物語や情景を素直に楽しむ方法です。これは分かりやすいタイプなので、これであれば私も楽しみやすいです。描き方や技法を楽しむ型絵の塗り方、筆の使い方、色の重ね方そのものを味わう型。私にはただ絵の具がぐちゃぐちゃになっているように見えてしまう作品も、実はこの型で見ると全く違った楽しみ方ができることに気づかされました。空間そのものを楽しむ型例えば、空間にただ石が置いてあるだけの作品。この場合、「石が何を意味するのか」ではなく、「この空間に石があることで自分はどんな感情になるのか」という視点で味わうべきだということです。このように、型を知ることで作品ごとに楽しみ方が変わり、自分の感情の動きにも敏感になれるのだと学びました。瀬戸内国際芸術祭2025での気づきこの本を手に取ったきっかけは、瀬戸内国際芸術祭への訪問でした。直島や豊島など、瀬戸内の美しい島々を巡りながら様々なアート作品に触れました。(アートとは別の話ですが、そもそも直島や豊島といった「島」そのものが素晴らしい景色・気候で、そこに住んでいる人々も素晴らしい人たちでした。最高の気分だったのでぜひ皆さん行ってみて欲しいです)しかし、その景色の美しさとは裏腹に、アート作品に対して「これは何だろう?」と戸惑う場面が多々ありました。それでも、こうした作品を目当てに世界中から観光客が訪れ、実際に楽しんでいる光景を見て、「人々は、"私がこれほどまでにわからないもの" を楽しむために訪れているのか...」と複雑な感情を抱きました。理解できないものに触れることで、逆に自分の世界が広がる。まさにそんな感覚を得て、大切な気づきがあったように感じます。アートの楽しみ方は人それぞれ一方で、私の妻や娘は絵を描くことが得意で、自然とアートを楽しめるタイプです。私がこの本で得た気づきを喜んで話したところ、彼女たちは半ば苛立ちながら否定してきました。「何いってんの?アートに型なんて必要ない。好きなように感じればいい!この本は間違っている。」...と。これもまた真実の一つなのでしょう。人によってここまで考え方が違うのかと驚くと同時に、「人と人とが理解し合うためには、こうした違いを受け入れ、考え方の背景に興味を持つことが大切だ」と改めて実感しました。それでも「説明がほしい」という気持ちただ、正直に言うと、私はいまだに「なぜ作品にキャプション(説明書き)を付けてくれないのか」という疑問が残っています。もちろん、アーティスト側には「言語化によって本来伝えたいことが薄まってしまう懸念」もあるでしょう。アート内で完結されているものを言語化するということは情報落ちは当然避けられないのですから。また、「説明したくない」「このまま見てわかって欲しい」「そもそも説明が苦手だ」という理由もあるでしょう。でも、それでも「誰にも理解されないのは寂しい」「多くの人に見てもらいたい」など、誰かに自分の想いを伝えたいという気持ちも少なからずあるはず。この矛盾の中で生まれる葛藤や、伝えようとする努力そのものが、人と人との距離を縮める大切なプロセスなのだと強く感じました。最後に今回の本と瀬戸内国際芸術祭での体験を通じて、私は「もっといろんなアートに触れ、さまざまな感情を味わってみたい」と心から思いました。アートはわからなくてもいい。でも、わからないなりにどう向き合うかを考えることが、人生をより豊かにしてくれるのだと気づかされた一冊でした。もしアートに興味があるけれど少し距離を感じている方がいれば、ぜひこの本を手に取ってみてください。新しい世界が広がるきっかけになるかもしれません。